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調剤薬局運営実践マニュアル


《目次》

1.初めに

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現在医薬分業は進みつつあり、街のあちこちに保険調剤をメインとしたいわゆる調剤薬局が見られるようになってきました。しかし医薬分業とその中における薬局調剤の歴史はまだ浅く、現場で頑張っている薬剤師も、そしてそれを指導する行政においても、今はまだ試行錯誤の段階であると言えるでしょう。そこで、今後の医療の中で薬局が担うべき役割とは何なのか、どういう方向をめざして行けば良いのか、そもそも医薬分業とは何なのか、などといった概念的な部分から、現場で実際に作業する上での注意すべきポイントまでをまとめてみました。

医療はサービス業です。ではサービスの内容は何かと言うと、患者さんが自分の病気を直したいと思ったとき、専門家の立場からその病気を直すために必要な判断や処置を提供することだと言えます。つまり医療における主役は患者さん自身であり、そこには「インフォームド・コンセント」が不可欠であるということです。ところが現実には医療サービスを提供する側である医療従事者においても、受ける側である患者さんにおいても、このあたりの意識が充分に根付いているとは言い難い状況にあります。そこで、今後の医薬分業のさらなる進展に向けて薬局が果たすべき役割を考えてみました。

本来の医薬分業において、薬局の役割を考えたとき、現在のところ薬局で提供すべき医療のきちんとした理論に、私はまだ出会ったことがありませんでした。そこで、それを「服薬ケア」と名付け、再構築することを試みてみました。服薬ケアの最終目標は、患者さんが主体的に治療に取り組み、その結果QOLを向上させることです。

そのためには薬の飲み方を単に説明すれば良いだけではなく、患者さんの感情に着目して、患者さんがどんな気持ちでこの薬を飲もうとしているのかを的確にフォローし、患者さん自身の意志で、この薬をきちんと飲まなくてはいけないという気持ちになってもらわなくてはなりません。それは、医者にかかるとはどういうことか、薬を飲むとはどういうことかまでを含めて専門家としてのアドバイスをして、患者さんに、自分の治療について充分理解をした上で、主体的に治療するという意識を持って頂く事と言えます。そこまでをトータルにケアしていく事が、医薬分業進展途上における薬局薬剤師の仕事であると考えるべきでしょう。

そして薬歴とは単に処方歴ではなく、患者さんの体の状態、治療に対する意識の状態、それに対する指導の記録、患者さんの人柄や日常生活の様子までを含めた服薬ケア全体の履歴であると考えられます。この服薬ケアの考え方を深め、実践していく事により、医師に対しては信頼を得て薬局が医療のパートナーであることを認識してもらい、患者さんに対してはより安心感を持って主体的に自身の治療にあたって頂くことが可能になっていくと考えられます。

窓口における患者応対は人間と人間との出会いの場です。薬剤師がいかに豊富な知識でもって患者さんをケアしようと思っても、そもそも人間として信頼されなければ指導効果はあがりません。つまり病院と同様に服薬ケアという医療を提供する医療施設としての薬局の薬剤師は、知識や技術は当然のこととして、それ以上に人間として信頼出来る人物である必要があります。

人が人に信頼されるには、人間を磨き、人格を向上させなくてはなりません。そのためには専門以外の本を読み、多くのことに興味を持ち、多くの人と会い、人間の幅を広げる努力が恒常的に必要となるでしょう。また処方せんは単に薬の名前の羅列ではありません。その処方せんの背後には、患者さんの人生がかくされています。調剤するにも、窓口においてケアするにも、1枚の処方せんからその患者さんの人生を読み取ることが出来れば、大いなる愛を持ってその処方を扱うことが出来るはずです。どんなに忙しくても常にそういう気持ちで仕事にあたることが出来れば、きっと患者さんからも確かな信頼が得られ、良い医療につながっていくことが出来ると確信しています。

そんな調剤の医療現場における大きな課題の一つが、患者さんの待ち時間の短縮であるといえます。病院が新たに分業に踏み切るとき、待ち時間の短縮を分業のメリットの一つとしてあげていることが多いと思います。ということは、病院でさんざん待ちくたびれた患者さんを薬局で更に長時間待たせるわけにはいきません。つまり薬局においては、調剤の質を保った上でのスピードアップが命であると言えるでしょう。しかし一方で窓口対応においては、どんなに混んでいても手を抜くことは出来ません。つまり処方せんを受け付けてから窓口で患者さんの名前を呼ぶまではとにかく早く、名前を呼んでからは必要充分な内容の窓口対応を、最短の時間で無駄を省いて手際良く行わなければなりません。ただ早ければ良いのでもなく、ただ丁寧にやれば良いのでもないのです。

その時大事なのは、医療の主役である患者さんが何を望んでいるかを的確に掴み取ることです。そしてそこに医療サービスを提供する専門家としての視点を加えて、どうすべきかを判断する事が必要です。その大前提をふまえた上で作業効率を徹底的にアップし、無駄のない作業手順を作り上げて行かなくてはなりません。

医薬分業も、その中における薬局のあり方も、いまだ確立されてはおりません。それどころか最前線の薬局で奮闘されている薬剤師の方々は、理想と現実のギャップのあまりの大きさに嘆いているかもしれません。しかし、いやだからこそ、我々がフロンティアである、我々が医薬分業を切り開いていくのであるという気概を持って、この困難だがやりがいのある仕事に立ち向かっていきたいと思います。

2.薬局

2−1.薬局の役割

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さてそれでは、薬局の役割とはいったい何でしょうか。皆さんなら「薬局の役割とは何ですか?」と聞かれて、なんと答えますか?
「薬局は医師が処方した処方せんに従って薬を患者さんにお渡しするところである。」と答えたとしたら・・・。私なら「×」にします。
もちろん、処方せんに記載された薬を正確に揃えて的確な窓口対応を行ないながらお薬をお渡しすることは、とても大切な薬局の仕事です。しかし、薬局は単なるお薬お渡し所では無いのです。もし、単なるお薬お渡し所であるならば、それはパチンコ屋さんの景品交換所と何ら変わりがないことになります。私は薬局薬剤師の皆さんには特に、「薬局は国民の健康管理の一躍を担う、健康管理ステーションである。」と答えて欲しいと思います。
それはいったいどういうことなのでしょうか。

2−2.薬局は医療施設である

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薬局はそれ自体が一つの医療施設としての役割を担っているのです。

そして医療施設として果たすべき役割が、既に病気になって病院へ通っている人から、まだ病院へは行っていない人、あるいは、健康であるが、より健康により美しく生活することに興味を持っている方、すべてを対象とした医療施設なのです。

これは医院や病院などの通常の医療機関よりも、かなり広い範囲を守備範囲としなくてはならないことを意味します。

ということは薬局で働く薬剤師の仕事も、もっと大きく捉えていかないと、医療全体の中で薬局が担うべき役割を果たすことが出来ないということになってしまいます。

2−3.薬剤師の仕事は調剤ではない

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薬剤師の仕事は何かと問われたときに、「調剤である」と答えたならば私は「違うのではないですか?」と問い掛けたいと思います。

確かに「調剤」は薬剤師のみが行なうことができる専業業務です。しかし薬剤師の仕事が調剤のみであると考えるのは、もはや通用しないと思うのです。調剤は薬剤師の仕事ですが、薬剤師の仕事は調剤のみではないということなのです。

それでは薬剤師の仕事は何か?やはり服薬ケアということになるでしょう。

「調剤」という言葉はそろそろその定義や意味付けを変更してかなければならない時が来ているのではないでしょうか。薬剤師の仕事は薬というものだけを扱っていればよかった過去とは、大きく違ってきているのです。これからは患者さん主体で行なわれる外来患者さんの薬物治療を成功に導くための「ケア」をしていかなければならないのだと思います。

つまり扱う対象が「薬」というモノから「患者さん」というヒトに変化したのです。この大きな変化の意味をよく捉えておかないと、薬局薬剤師が担わなければならない大切な役割を見失ってしまう危険性があります。

これまでやってきた業務に「服薬指導」や「薬歴管理」が加わっただけではないのです。そもそも医薬分業という理念の元に、薬剤師のあり方にパラダイムシフトともいうべき大きな変換が起きているのです。

2−4.薬局薬剤師の守備範囲はとても広い

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薬局が医療施設であるということに対して、現場で働いていらっしゃる皆さんは、当然の事とお思いでしょう。しかし、実際に薬局を利用してくださる患者さんにとって、医療施設であるというのはどういうことなのかということは、とても大切な観点だと思います。

言い方を換えると、薬局を訪れる患者さんが「医者からあそこへ行けと言われた」、「病院のすぐ近くにあるから」という理由で薬局を訪れるのではなく、薬局での医療を受けよう、受けたいと思って来て下さるようでなければならないのです。患者さんが薬局で「医療を受けている」と思えるようでなければならないのです。それが実感できるような対応が求められているということです。

これは医院や病院などの通常の医療機関よりも、かなり広い範囲を守備範囲としなくてはならないことを意味します。

病院においては医師を中心に様々な医療職が患者さんのために働いています。それぞれがそれぞれの専門性を活かして医療を提供しているのです。ところが薬局においては、基本的に医療職は薬剤師のみです。つまり病院内であれば他の専門家に任せるべき内容であっても、薬局では一旦はすべてお引き受けする必要があるということです。何を質問しても「それは先生に聞いてください」では医療施設として信頼していただくことは有り得ないと心得るべきでしょう。

ただし、薬剤師はあくまで薬の専門家ですから、薬物治療全般に係る生活に関することや、治療に取り組む意欲などの患者さんの心をケアの対象とするわけですが、その中心にあくまで薬物治療成功への道案内という観点が貫かれていることは必要です。それにそもそも全く専門外のことは、役に立ちたくても出来ないこともあります。

そんなときにはしかるべき専門家へ患者さんの困っていることを引き継いでいって、結果的に解決できるように手助けすることも、ケアの一部だと考えることです。医師に情報としてフィードバックしたり、行政の福祉担当窓口を紹介したり、患者さんの抱えている問題を解決できるように道筋をつけて差し上げることが、立派なケアなのです。

最近は、薬局に栄養士や看護婦が待機しているところも増えてきました。地域の住民に「健康管理ステーション」として受け入れられ、信頼されていくためには、そのような試みはとても素晴らしいことだと思います。薬物治療を行なうに当たって障害となっていること(物理的な障害も、心理的な障害もすべて)を取り除くことが、私たちの使命であると考え、そのために必要な様々な知識を身につけていきたいと思います。

3.薬歴

3−1.医療記録としての意味

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皆さんの薬局では、必ず薬歴を記載していると思います。しかし薬歴の持つ意味を、本当にしっかりと理解している方は、以外に少ないのではないでしょうか。

すでに述べたように、薬歴は私たち薬局薬剤師の提供した医療の内容を記録する台帳です。医療記録というのは、プロとしてなした仕事の内容、及びその質を記録する証拠としての意味合いがあります。つまり、「間違いなくこのような仕事をこの患者さんに対してしました」という証拠としての意味があるのです。

医師は診療録(カルテの正式名)、看護師は看護記録を、それぞれ自分たちの公式記録として記載しています。この医療記録は、必ず記録することを義務付けられているだけではなく、その内容が正確でないと罰せられますし、後で書き換えることも(たとえ故意ではなくとも)禁止されています。

私たち薬局薬剤師にとっては、いつもつけている薬歴が、このような医療記録に当たるでしょう。

医師や看護師は、それぞれ学生時代にその医療記録としての意味を、しっかりと学んで来るようですが、私たち薬剤師はどうでしょうか? 薬歴についてそのようなことを学んだ記憶がありますでしょうか? たぶんないのではないでしょうか。

3−2.公式記録としての法律的な問題

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実はそこには大きな法律的な問題があるのです。

法律上、薬剤師の公式記録は、薬歴ではなくて調剤録なのです。調剤が薬剤師法において定められている薬剤師の排他的専業業務(薬剤師でなければ行ってはいけない業務)であることは、すでに述べたとおりですが、法律的に薬剤師の仕事が「調剤」と定められているために、その記録は「調剤録」であるとなっているのです。

ある意味、現状の法律を考えると筋が通っているというか、しょうがないことだと理解は出来るのですが、やはりこのあたりは、しっかりと議論をして、法律を変える方向へ持っていかなければいけないのではないでしょうか。

なぜなら、薬剤師法においてはその場で調剤が完了した場合には、調剤録の記載は省略してよいとなっているからです。プロとしての業務記録であるならば、省略してよいというのはおかしいと思います。そして、健康保険法上でも、保険調剤を行った場合には調剤録を残すように定められているのですが、こちらは省略してよいという定めはなく、現状私たちは健康保険法に則った調剤録を記録しているのです。

現行の調剤録は、その多くが処方せんの裏に記載していると思いますが、中身を良く見てみると、どんな保険点数を算定したのか、その明細書のようになっています。これは、健康保険法によりその内容を明記するように定められているからです。

それでは、薬局薬剤師が患者さんに提供した医療行為は、いったいどこに記載すればよいのでしょうか?

答えはもちろん、薬歴です。しかし、今述べてきたように、この薬歴は、薬剤師関連の医療法規の中にはどこにも出てこない文書であり、公式文書ではないものなのです。

では、薬歴は何を根拠に記載しているのでしょうか?

実は、調剤報酬算定の要件として、薬歴を記載しないと「薬歴管理料」などの基本的な点数が取れないルールになっているのです。つまり、医療関係法規に基づく公式記録ではない薬歴は、調剤報酬、つまりお金をもらうための条件として、書いているわけです。

薬歴そのものの、法的な根拠がこのような状態であるからこそ、業務の中で必ず書いている薬歴の本質的な意味がきちんと議論され、教育されることなく、「とにかく、書け!」(書かないとお金がもらえないから)ということで業務が行われているということなのです。

3−3.「やったことは書く。やっていないことは書かない。」が鉄則

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さてそれでは、具体的に薬歴記載にあたって、どのようにすればいいのでしょうか?

薬歴を書く上での大原則は、「やったことは書く。やっていないことは書かない。」ということです。「なんだ、そんなことあたりまえじゃないか・・」とおっしゃる方も多いかもしれませんが、私の印象では、この基本中の基本が以外に守られていないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

まず、「やったことは書く」の方ですが、「〜について指導」では、指導した旨の記載しかありません。「やったこと」は書いてありません。これでは記録としては不十分と言わざるを得ません。「やったことは書く」というのは、「何をしたのか」その内容まできちんと記載して初めて記録としての意味があるということなのです。「新薬につき用法用量指導」や「副作用について指導」では、医療記録とは言えません。どんな指導をしたのか、その内容を、簡潔でもかまわないので必ず書くようにしてください。

さて次に「やっていないことは書かない」の方ですが、こちらの方がもっと守られていないように、私は感じます。これは今後の薬局運営のレベルアップのためには、とても大切なところなので、少し詳しく触れてみたいと思います。

3−4.あいまいなことを書かないように気を付ける

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私自身の経験にもたくさんあるのですが、ポイントになる事柄はメモしておいたとしても、薬歴を書くときになってその患者さんとどのようなやり取りをしたのか、どうしても詳しく思い出せない患者さんはいないでしょうか? そんな時、薬歴にはどんな風に書きますか? 多分、メモしてある内容をもれなく書き込むために、当たり障りのない、「こう書いておけば間違いないだろう」というような内容を書いてはいないでしょうか? 例えば、メモに「気分が悪い気がする」と書いてあったとしましょう。詳細は思い出せないのですが、たしか「この薬を飲み始めてから気分が悪いような気がする・・」というような話が患者さんからあったと思う・・・。でもこちらがなんて答えたのか、詳しく覚えていない・・・。そんなときに「もう少し飲んでみて様子を見て下さい。まだ具合が悪いような気がするなら、次回医師に相談してください。」などと書いたりしていませんか? つじつまは合っているので、記述としてはおかしくありませんが、でも、これは事実ではありません。つまり、医療記録とは言えないわけです。メモが取ってあることは、間違いのない事実でしょうが、それをつなぐために薬歴を書くときに書き加えたことは、あくまで作文であって、事実の記録ではないのです。

3−5.後から考えた(調べた)ことを混ぜ込まない

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まだあります。患者さんとお話している最中は、記憶があいまいで自信を持って言えなかった事を、後で調べてみることもあるでしょう。調べること自体はとてもすばらしいことなので、ぜひそのような心がけをもち続けていただきたいと思うのですが、薬歴に記載するときに、その後から調べたことを、まるで応対の最中に自分が知っていたかのごとく書き加えてしまったりしませんか? そうすると、実際には「あぁ・・・そんなこともああるかもしれませんので注意してくださいね」というようなあいまいな(これはある意味ごまかしですね)言い方を実際にはしているはずですが、後で調べたことを混ぜ込んで書いてしまうと、その記述はきっと「この薬は○○ということが知られていますので、〜には注意してください。」というように、話した内容と記載内容が微妙に異なってくるはずです。これは実際にやったこと(患者さんにお話したこと)とは違いますので、医療記録としては虚偽の記載となってしまいます。

また、もしあなたの薬歴がSOAP形式で記載されているならば、後で調べたことをO情報に書き込んで、アセスメント、プランを書いてはいけません。なぜならば、O情報に調べた事実を書き込むということは、あなたは患者応対の最中にその事実をきちんと把握していて、それを元に判断したことを意味します。しかし実際は後で調べたのであって、応対の最中の判断根拠には、その事実は用いられていないことになります。したがってこれも虚偽の記載となります。

ことは程度問題になってしまうかもしれませんが、もしあなたが「このくらいはいいじゃないか」「まったくウソを書いているわけではない」と思うようであるならば、これまで述べてきた「医療記録としての意味」を理解していないことになります。

このように、後で調べたことや、後で考えてみて「もしかすると〜だったのではないだろうか?」と、患者さんとお話している最中とは違うことを思いついたりした場合には、もう「その日の患者さんとのやり取り」とは違う場面で考えたことや調べたことになりますから、その日の経過記録とは別の欄に書くようにしてください。もし、その新しい知見によって、次回質問したいことが出てきたり、あるいは患者さんに連絡を取ったり、何かアクションを起こしたなら、新しいプロブレムを認識したことになりますから、別のSOAPをもう一つ新たに立てて書くべきでしょう。

3−6.薬歴はその場で書くのが理想

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実は、このような問題の根っこに、現状の薬局業務特有の大きな問題が潜んでいるのです。

医師は、診察を行いながらその場でカルテにどんどん記録していきます。夕方まとめてカルテを書く医師など、一人もいません。しかし薬剤師の場合は、夕方患者さんへのお薬のお渡しが一通り終わってからまとめて書く薬局が多いと思います。これが問題なのだと思います。

つまり、日本における薬局における院外処方せんに基づいた調剤というものが、最初は「とにかく薬を渡す」から始まって、だんだん内容的にも充実してきたという歴史があるため、ここまで述べてきた「医療記録としての意味」が業務の中に活かされていないのです。「お薬を渡す」ことを優先して記録を後回しにするというのは、その本来の医療行為としての意味を考えると、本当はありえないことなのですが、すでに述べた法律的な不備などもあり、薬歴というものが薬局業務の中で後からだんだんやるべきことが増えてきたものであるため、患者さんにお薬を渡すことを優先して記録を後回しにするという意識が、なかなか払拭できないのです。

私は今後の薬局運営において、この「薬歴は後回し」という意識を、徹底的に改革し、「薬歴はその場で書くもの」という常識を作らないと、薬剤師が医師と対等な医療者として国民から認知されることはないと考えています。薬歴はその場で書くものなのです。薬歴を書き終わって初めて、その患者さんへの医療が終了するのです。そのように考えるべきでしょう。

明日からいきなり手順を変えるというわけにもいかないとは思いますが、「薬歴はその場で書くのが理想である」という価値観を、現場も経営者もまず真っ先に確認しあい、どうやってその理想に近づけていくのかを、真剣に考えていくべきでしょう。

 (つづく・・・・)


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