服薬ケア研究所受付・案内へ戻る
患者応対技術研究室へ戻る

服薬ケアのためのコミュニケーション技法


《目次》

1.初めに


1.初めに

1−1.コミュニケーション技法?何それ?

目次に戻る

 コミュニケーション技法、あるいはカウンセリングという言葉を聞いたとき、皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?もしかすると、ソファーか何かに向かい合って、「今日はどんなご相談でしょう・・・」なんていいながらゆったりと話しているところを想像してるかもしれません。
 そんなイメージと、窓口での実際のケアとがどうしても結びつかないと言う方もいらっしゃると思います。

 確かに薬局の窓口はものすごく忙しい。そんな中で、カウンセリングと言われてもちょっとイメージがつかめないかもしれません。しかし、これからお話ししていく事は、もっと実際の業務の中で具体的に役立つコミュニケーションの取り方のお話です。もう少し正確に言うと、”患者さんのお気持ちをカウンセリングマインドを持って捉えましょう”という事かもしれません。あまり硬く考えずに、気楽に読んでみてください。きっと皆さんの日常の業務の中で役に立つことがあると思います。

 「服薬ケア」を理解するには、このカウンセリングマインドは決して省くことが出来ない、とても重要な考え方です。「感情への着目」一つが出来るようになっただけでも、きっと毎日の業務がまるで違ったものとして、目を見張るものとなることでしょう。

 ただしここでお断りしておかなくてはいけないことがあります。ここで扱う理論の中心はヘルスカウンセリングですが、私自身ヘルスカウンセリングは学んでいる最中です。もちろん、カウンセラーの資格も持ってはいません。服薬ケアを理解し、服薬ケアを実践していく上でのカウンセリング、コミュニケーション技法という観点でこの文章は書いていきます。

 ヘルスカウンセリングそのものについては、ぜひ、ご自分でヘルスカウンセリング学会に問合せ、公認のセミナーにて学んでください。なかなか忙しくて参加できないのですが、私もまだセミナーで学んでいる途中です。セミナーでお会いできるとうれしいですね。私も一生懸命勉強しながら書き進めていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

1−2.非言語コミュニケーションの重要性

目次に戻る

医療行為におけるコミュニケーションは言語2割、非言語8割と言われています。

通常我々は言葉で何かを伝えよう、言葉で何かを聞こうとしがちなのですが、実は医療行為の中では言葉以外の部分、例えば、顔色とか、表情とか、声の明るさとか、立ち振る舞いとか、うれしそうな顔をしているとか、つらそうな顔をしているとか・・・、の方が重要なのです。

これはとても大事なポイントです。ここを十分に理解しておかないと間違いの元になります。

当たり前のことではありますが、コミュニケーションというのは双方向のものです。したがってこの原則は、こちら側から何かを伝えたいときも、患者さんから何かを受け取りたいときにも、両方当てはまります。私たちは的確に伝えたつもりでも、非言語の部分から違った意味に受け取られてしまうこともあるわけです。

例えばこんな場合です。

医療者である私たちだって人間です。その日の体調によって、頭が痛いとか、具合が悪いとか、疲れているとか、あるいは歯医者に行って来たところで歯が痛いとか、いろいろあるわけです。そんなときに対応した患者さんに、非の打ち所のない言葉遣いや立ち振る舞いでとても丁寧に接したつもりでも、自分がつらいという思いが体のどこかに表れていれば、それが患者さんに伝わってしまいます。患者さんがとても優しい人なら「具合でも悪いのですか?」なんて言ってくれるかもしれませんが、(いや、実際に何度も経験してます。本来は薬を受け取りに来ている患者さんの方がどこか悪いはずなのに、こちらが逆に心配されてしまって・・恐縮と言うか恥ずかしいと言うか・・)大概はマイナスのイメージを与えてしまうはずです。「具合の悪そうな薬剤師さんから薬もらっても効きそうにない。」とか、「何か感じ悪い薬局ね。」まで、患者さんの感じ方は千差万別です。服薬ケアの第一歩は自分自身の健康管理でしょうか。

そして服薬ケアでもっとも大事なのは、その逆のケースです。つまり、患者さんが言葉にはしてくださらない本当の心配事や問題点を、非言語の部分をよく観察することによって、こちらから気付いて行く必要があるわけです。

日本人と言うのは、何ごとも人に合わせるところがあります。いわゆる「イイ子」ちゃんです。この「イイ子」特性というのが日本人にもっとも多く、実に8〜9割近くの日本人が「イイ子」であるそうです。

では、その「イイ子」が薬局窓口でどんなを考えてみましょう。とにかく日本人に一番多いタイプなのですから、しっかりと押さえておく必要があります。

1−3.言葉と真実は裏腹なことがある…・!?

目次に戻る

たとえば、患者さんに「どこか具合の悪いところはありませんか?」と聞いたりします。すると「イイ子」である人の多くは、「いえ、大丈夫です。」と答えると思います。

もちろん、すぐに具合の悪いところを説明してくださる方もいらっしゃいます。しかし、そういう方の場合は、窓口で問題になるわけではありません。そのままそのお話くださった内容に関して、話を進めていけるからです。

しかし、口では「大丈夫」と言いながら、実は大丈夫ではなくて困っていること、気にしていることがある方の場合、的確なケアをするためには、まずそれを話して戴かなければ、何をケアしていけば良いかも分かりません。いやもっと言うと、口で言っていることと、実際とはどうも違いそううだなということに、こちらが気が付くことが出来なければ、「ああ、大丈夫なのか。」と言葉どおりに受け取ってしまって、結局は役には立てないことになります。

ここで、非言語のメッセージを受け取れるかどうかが、まず問題になるわけです。

これをキーメッセージといいます。

1−4.キーメッセージを間違いなく受け取る

目次に戻る

人は何かを伝えようとするときに、感情の強く動いた部分で、何らかの身体症状が現れます。

たとえば、身振り手振りがそこだけ大きくなったり、声の調子が強くなったり、目が輝いたり、潤んだり、人によっては、鼻の頭から汗をかいたり、赤くなったり、耳が真っ赤になったりします。

現われ方は人それぞれ千差万別なのですが、とにかく感情が強く動いたとき、外見でも分かる何らかの身体症状が現れるわけです。

これがキーメッセージです。

この非言語のコミュニケーションを見逃すことなく受け取ることが出来れば、それがこれからケアを進めていくべき方向性の道しるべになるはずなのです。

1−5.受け取ったことがあっているかどうかは、患者さんに確かめる

目次に戻る

さて、本論を始める前に一つとても大切なことを確認しておきたいと思います。

これから患者さんの感情に着目してケアを進めて行くわけですが、すべて患者さんの心の中のことですので、いくら自分が「わかった」と思っても、それは単にそう思っただけであって、本当に正しいかどうかはわからないのです。

それではどうすればいいのか・・。

そんなときは、「あっているかどうか患者さんに聞く。」ことです。通常の服薬“指導”を行っているときには、お話の中から「この患者さんはこんなふうに考えているんだな。」と思ったら、それを前程として次の話(それに対する対策であったり、慰めのことがであったり・・)に移ってしまっていると思います。

もしこちらが「こう思っているのだろう。」と感じたことがあっていればそれでいいのですが、違っていた場合、患者さんは「この人は早とちりな人だなあ。」と感じるでしょう。

いずれにしろ患者さんの気持ちとは違う結論になっていますから、患者さんは「私の気持ちをわかってもらえなかった。」と、とても悲しい気持ちになるに違いありません。

そんな時、患者さんに聞いて確かめてください。あっているかどうかは患者さんが教えてくれます。

そのために必要な技法が、これからお話する「効果的な繰り返し」などの一連の技法です。さあ、学んで行きましょう! (つづく・・・)


皆様からのご意見、ご感想を心よりお待ちしております。

メールのあて先はこちら→[ ]です。
よろしくお願いいたします。


服薬ケア研究所受付・案内へ戻る
患者応対技術研究室へ戻る